ボレロは18世紀後半に誕生した3拍子を刻むスペインの民族舞踊。
そのリズムはピッチカートと呼ばれる擦弦楽器における弦を指ではじく奏法が用いられます。
様々な楽器によって、主題が、ハ長の調性とリズムを変えずに、18回も繰り返されるところが、他の曲とは一味違った楽しみをもたらしています♪
作曲者のモーリス・ラヴェルはフランス南西部のフランス領バスク出身。
バスク地方はフランスとスペインにまたがっていることから、フランス領であってもスペイン領バスクとの関係は深いと思われます。
そして本曲は、ラヴェルのスペイン文化への造詣が伺える一曲です。
スペインといえば、酒場バル。実は、ボレロで描かれるのもバルでの一シーン。踊り子がひとり踊り出し、少しづつ場の空気に影響を与え、最後には大勢の客たちが熱狂の域に達します。
ここで、「ボレロ」以外のラヴェル作曲のバレエ曲を振り返りたいと思います。
「マ・メール・ロワ」(1910)は友人の子供のためにマザーグースをテーマに作曲されます。
「ダフニスとクロエ」(1912)は男女の恋愛物語であるギリシャ神話をベースにしたバレエ作品。
「子供と魔法」(1925)は、宿題をさぼった子どもが母親に叱られ、癇癪を起した結果、八つ当たりされた物が動き出すという奇想天外なオペラとバレエの融合作品。
以上に挙げた3作品のうち、最初と最後の2作品は子供を主人公とし、ファンタジー色が強いもので、ダフニスとクロエに関しては、男女の関係やエーゲ海をモチーフに「自然」を中心にした作品。
翻ってボレロ(1928)では、酒に酔った大人で溢れかえっていて、ファンタジーや自然とは隔たりを感じさせるモチーフです。しかし、ひとりの踊り子が踊り出したことをきっかけに、ひとつの物語が生み出されるという、意表を突くような展開と、風変りと言えるほどに繰り返される主題がとてもマッチしていますよね!