かめ(管理人の一人)がよく社宅断熱DIYで利用してきた3種類の断熱材について、現在(2021年1月)におけるトレンドを調査し、比較した結果を記録に残すことにしました。
<今回の記事で比較する断熱材>
- 押出法ポリスチレンフォーム:XPS [EXtruded PolyStyrene foam]
- ポリエチレンフォーム:EPE [Expanded PolyEthylene foam]
- エチレン酢酸ビニルフォーム:EVA [Ethylene-Vinyl Acetate foam]
※foam:発泡体。いずれの素材も発泡によって断熱性能を得ているため断熱材はfoamだが、材料を示すアルファベット3文字で慣用的に断熱材を表現していることも多い。当記事においては「フォーム」を付けて【材料】と【断熱材】を区別する。
※これまでの断熱施工の記事は、【断熱】タグ をクリックいただくことで一覧表示できます。
社宅における断熱の課題と断熱材の選定
社宅における断熱DIYの課題として以下の点が挙げられます。
- 建物の改造が許されない。
- 壁・床・天井などの内装は入居前の状態に戻せなければならない。
- 壁ができあがってしまっており、壁の内部から断熱を行うことが難しい。
これらの課題により、以下の断熱施工は封じられることになります。
- 吹き付け系断熱材の使用
- 繊維系断熱材の充填
- 接着剤や木ネジを用いた断熱材の固定
寒い社宅を何とか断熱したいと考えたかめがたどり着いた答えが、
【それ自体がある程度強度を持っている断熱材】
を利用することです。
そして、一般消費者がホームセンターや通販で簡単に入手できる断熱材として、以下の3種類の断熱材をよく選定するようになりました。
- 押出法ポリスチレンフォーム:XPS [EXtruded PolyStyrene foam]
- ポリエチレンフォーム:EPE [Expanded PolyEthylene foam]
- エチレン酢酸ビニルフォーム:EVA [Ethylene-Vinyl Acetate foam]
いずれも、
元々は断熱性能のないプラスチック材料を発泡させて、空気を微小空間に閉じ込めることで断熱性能を得ています。
それぞれを比較してみることにします。
押出法ポリスチレン(XPS)フォームとは
押出法ポリスチレン(以降XPSと略します)フォームとは、 超簡単に言うとスタイロフォームに代表される、もろくて軽い板状の断熱材です。
(株)カネカさんが製造する「カネライトフォーム」、(株)JSPさんが製造する「ミラフォーム」も、同じようにXPSフォームとなります。
※旭化成建材(株)さんが製造する「ネオマフォーム」、フクビ化学工業(株)さんが製造する「フェノバボード」は、フェノールフォームに分類されますが、こちらは別の機会に比較したいと思います。
XPSフォームの物性や特徴はこちらのリンク先のページで紹介されていますので、当サイトでの掲載は省かせていただきます。
※スタイロフォームメーカーのデュポン・スタイロ(株)さんのサイトURL:https://www.dupontstyro.co.jp/styrofoam/spec.php
※押出発泡ポリスチレン工業会さんのサイトURL:https://www.epfa.jp/xps/
かめが過去に行った断熱DIYの中で最もよく使用しているのが、このXPSフォームです。
今回紹介する断熱材の中では、熱伝導率が規格で定められているので断熱材として安心して利用できます。
- 「スタイロフォーム1b」規格:XPS1bC、熱伝導率:0.036W/(m・K)以下
- 「スタイロエース-Ⅱ」規格:XPS3bA、熱伝導率:0.028W/(m・K)以下
また、過去の経験から以下の点においても扱いやすいDIY材料と言えます。
- ホームセンターでも購入可能。
- 通販でまとめ買いすれば安価でかつ家にも宅配可能。
- 季節による体積変化が小さく、寸法合わせをしても隙間になりにくい。
- テープ貼りをすれば、弱点である摩耗性や強度を補うことができる。
特に規格:XPS3bAのものはXPSフォームの弱点である強度の面でも優れているため、テープ貼りで補強することで、大窓を塞ぐための自立断熱ボードとしても活用できました。
※詳細はこちらの記事で紹介しています。
ポリエチレン(EPE)フォームとは
ポリエチレン(以降EPEと略します)フォームとは、 超簡単に言うとポリエチレンを発泡させた材料です。
EPEフォームの物性や特徴はこちらのリンク先のページで紹介されていますので、当サイトでの掲載は省かせていただきます。
※Wikipedia「発泡プラスチック」のサイトURL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E6%B3%A1%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF
※「フォームエース」のメーカーの古河電気工業(株)さんのサイトURL:https://www.furukawa.co.jp/foam/foam/index.htm
EPEフォームはXPSフォームと比較するとクッション性がありますので、【断熱材】と言うよりはジョイントマットなどの【衝撃を吸収する材料】として販売・活用されています。
実際、かめが過去のDIYで利用した添付写真のEPEフォームは楽天市場で購入しましたが、【断熱材】として販売されている商品ではありません。
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※販売元であるトラスコ中山(株)さんのサイトURL:https://www.orange-book.com/ja/c/products/index.html?itemCd=TPES1010W+++++++++++++++++++++3100&q=TPES-1010W
熱伝導率の情報が記載されていないので、このままでは断熱性能の比較ができません…
「Made in Japan」と記されているのは嬉しいですが、トラスコ中山(株)さんがどこのメーカーからこのEPEフォームを仕入れているかのは、商品ラベルの情報からは追跡できなさそうです…
と言うことで、ネットサーフィンで確認できる範囲で【熱伝導率を推定する】ことにしました。
古河電気工業(株)さんのこちらのリンク先のPDFパンフレットに、EPEフォームである「フォームエース」の【発泡倍率ごとの熱伝導率】が記載されていました!
https://www.furukawa.co.jp/product/catalogue/pdf/foamace_p040.pdf
発泡倍率5~40倍での熱伝導率が、0.067~0.038W/(m・K)と記載されており、市販のEPEフォームの基準とすることができそうですね!!
ただし、こちらのPDFパンフレットの情報だけでは【発泡倍率ごとの密度】が分かりませんので、(株)創和さんのこちらのリンク先のサイトに掲載されている表が参考になります。
https://sowa.gr.jp/product/205/
他にも複数のEPEフォームのサイトを参照しましたが、
【 無発泡ポリエチレンの密度(約1,000kg/m³) ÷ 発泡倍率(5~40倍) ≒ EPEフォームの密度 】
の関係式が成り立つように思われました。
以上の調査・考察の結果をまとめますと以下の通りとなります。
- EPEフォームは軽くて柔らかい(発泡倍率が高い)ほど断熱性能が高い。
- 市販のEPEフォームの断熱性能は、発泡倍率によって0.067~0.038W/(m・K)の間と推定される。
<EPEフォームの各物性値の推定値>
発泡倍率 [倍] |
密度 [kg/m³] |
熱伝導率 [W/(m・K)] |
---|---|---|
5 | 200 | 0.067 |
10 | 100 | 0.048 |
15 | 65 | 0.044 |
20 | 50 | 0.039 |
30 | 33 | 0.040 |
40 | 25 | 0.038 |
※各社ホームページに掲載されている情報を参考にかめが推定した数値のため、実際は製法・商品ごとに異なります。
例えば、かめが過去のDIYで利用したトラスコ中山(株)さんの「発泡ポリエチレンシート」には【ソフト】と【ハード】がありますが、密度の数値から推定される断熱性能は【ソフト】の方が高いと推定されます。
- 【ソフト】密度:25kg/m³ → 推定発泡倍率:40倍 → 推定熱伝導率:0.038W/(m・K)
- 【ハード】密度:65kg/m³ → 推定発泡倍率:15倍 → 推定熱伝導率:0.044W/(m・K)
値段も【ソフト】の方が少し安いので、断熱性能の面では【ソフト】がオススメですが、
EPEフォームは軽くて柔らかいほど季節の温度差による体積変化が大きい点に注意です!
冬に敷き詰めると夏に膨張して浮き出し、逆に夏に敷き詰めると隙間が発生します…
断熱性能もXPSフォームの方が優れるため、かめは、
【人が触れる可能性がある場所で耐水性が必要とされる場所】
でEPEフォームを選定しました。
こちらのお風呂場の壁断熱では、テープ貼りのXPSフォームでは蒸気でテープが剥離してカビが生える可能性があったため、EPEフォームを選定しました。
※社宅ですがお風呂場の壁にシリコンコーキングを行っているイケナイ工事の例です(笑)
また、床に断熱材を敷いて使う場合は、
【XPSフォームよりもソフトタイプのEPEフォームの方が温かさを感じる】
ことを経験的に認識しています。
EPEフォームにクッション性があることで、足の裏と断熱材が密着する面積が増加し、より体の熱が逃げにくくなるためだと考えています。
EPEフォームは耐摩耗性にも優れていることから、【床断熱】にオススメの材料です!
エチレン酢酸ビニル(EVA)フォームとは
エチレン酢酸ビニル(以降EVAと略します)フォームとは、 超簡単に言うとエチレン酢酸ビニルのポリマーを発泡させた材料です。
EVAフォームの物性や特徴はこちらのリンク先のページで紹介されていますので、当サイトでの掲載は省かせていただきます。
※Wikipedia「発泡プラスチック」のサイトURL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BA%E6%B3%A1%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%83%E3%82%AF
※「エバフォーム」のメーカーの三福工業(株)さんのサイトURL:https://www.mitsufuku.co.jp/eva-foam/
かめがEVAフォームを知ったのは、こちらの記事で購入したコルクマットのベースの材料に使われていたのがきっかけです。
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※2年前に購入した時よりも価格が12%も上昇していることに驚きました。インフレですね!(笑)
実際はコルクよりもEVAフォーム自体の方が熱伝導率が低く接触時に温かく感じられますので、コスパ的にもコルクなしのEVAフォームジョイントマットを購入するのが良さそうです。
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※EVAフォームジョイントマットは、こちらの記事でフル活用しています。
表面が硬く成形されたスキン層を表面としている商品が多いように思いますが、実際は裏面の柔らかい面を表にして敷き詰めた方が、温かく感じると思います(笑)
その他、EVAフォームジョイントマットの購入については以下の点もポイントとして挙げられます。
- 100均でも手軽に購入できるが、通販でのまとめ買いの方が半額近く安くなる。
- つなぎ目の断熱ロスが気になるので、30cmではなく60cmの大判のものを選ぶ。
また、EPEフォームのジョイントマットも売られていることから、EVAフォームとの材料の違いをかめなりに考察してまとめました。
- どちらの発泡体もポリエチレンをベースとした材料のため、熱物性に大きな違いはないと思われる。
- EVAフォームの方が弾力性・耐滑性に優れるようだが、各メーカーの発泡倍率と密度の数値を見る限りでは、EPEフォームと同じように熱伝導率が変化することが考えられる。
- ジョイントマットの断面には目で見て分かるほどの発泡ムラは確認できず、クッション性もあることから、EPEフォームと同等の断熱性能がEVAフォームに期待できると言える。
- 【発泡倍率】も同様に密度から推定することが可能と言える。
- ジョイントマットの弾力性からは発泡倍率は40倍もないと思われるため、断熱性能を優先するのであれば、割高となるがソフトタイプのEPEフォームを選定する必要がある。
まとめ
今回はかめがよく使う断熱材について、思いつきで比較してみました♪
本当は【価格】と【厚み】についてもう少し詳しく整理しておきたいところではありますが、記事が長くなりそうなのでやめておきます(笑)
最後にどんな場面でかめがよく使うかまとめて終わりにします。
- 断熱性能にこだわりたい時はXPSフォーム
- 脱衣所の床に敷き詰めるのはEPEフォーム
- 入手のしやすさ扱いやすさであればEVAフォーム