ヴェリズモ・オペラの時代(1890~1900)

ゴールデンウィーク明けも読書です!
今日は、19世紀末イタリアにて生まれたオペラの新ジャンル「ヴェリズモ・オペラ」を紹介します。

ヴェリズモ時代は、1890~1900年の10年間と言われているそうです。
※1890年には、マスカーニの「カヴァッレリーア・ルスティカーナ」、1900年にはプッチーニの「トスカ」が上演された。どちらも、ヴェリズモ的な作品。但し、プッチーニはヴェリズモの影響を受けつつ、自らの世界も確立していた。

ヴェリズモ・オペラという言葉はヴェリズモ文学という文学ジャンルがそのまま演劇に取り込まれたことに由来します。

ヴェリズモ文学とは、事実を客観的に捉えるようとするフランス文学の自然主義に端を発した文学の潮流であり、その最大の特徴は、写実主義(実世界の日常を写し出す)です。

現実主義・真実主義・リアリズムなどの呼び方もあります。

写実主義は直前期の流行であったロマン主義に対する抵抗という形で登場しました。

ヴェリズモ・オペラの幕開けは、マスカーニによる1890年ローマ初演の「カヴァレリア・ルスティカーナ」。ストーリーは写実主義の代表的な小説家であるジョヴァンニ・ヴェルガの小説に基づいています。

一言でいうと、シチリア南部の貧しく無知な人々が、恋の嫉妬によって、悲劇を起こすまでの様子を描くお話です。

現在のシチリア島には、マッシモ劇場@パレルモ、ベッリーニ@カターニア、の2つの劇場があり、上演されているようです。

大成功を収めたこのオペラですが、ヴェリズモ的な題材が良かったことだけが成功要因ではなく、叫び声に近いような声を含む感情表現が強烈な歌唱法が人々の心を強く動かした、と言われています。なので、ヴェリズモ・オペラの特徴として、このような歌唱法についても挙げられることがあります。

ヴェリズモ・オペラ時代に活躍したのが、プッチーニです。

プッチーニは、ヴェリズモ・オペラ以外の作品も多く作りましたが、ヴェリズモの影響を受けており、ヴェリズモ・オペラの歌唱的な特徴を反映した「トスカ」(1900)を作曲しています。

ところが、この時代(1890~1900)はヴェリズモ・オペラとプッチーニの2二大勢力の独占状態になってしまったため、新しい世代の芸術家が、これらに対抗しようとします。

その結果生まれたのが、象徴主義(別称:印象主義・表現主義)です。

対抗心を持っていた新世代は、反体制を訴えたファシストの思想に共感し、積極的にファシストと関係を持ちます。(上述のマスカーニもスカラ座監督を狙ってファシストと積極的に関係を持った一人。)

これと同時にファシスト側も芸術家を政治的プロパガンダとして利用していました。

ファシストのムッソリーニは、プッチーニをファシスト党の議員にする※、彼の死にあたり国葬を行う、など国民の支持を高める目的でプッチーニとの関係づくりに努めた、と言われています。

※プッチーニはファシズム支持派ではなかったようです。議員の職も短期間で辞めています。

印象主義の代表的なフランス人作曲家「ドッビュッシー」。

ドビュッシー 「ノクターン(夜想曲)」