スメタナ「売られた花嫁」序曲

チェコ国民楽派スメタナのオペラ「売られた花嫁」(1870)は、ブラームスのハンガリー舞曲集(1869)とほぼ同時期に作曲されたオペラ作品で、スメタナの最も有名な交響曲「わが祖国」の約10年前の作品です。

オペラ「売られた花嫁」の題材

オペラの形式は「オペラ・ブッファ」と呼ばれるジャンルに属します。「オペラ・ブッファ」は対となる「オペラ・セリア」よりも短かく(3幕以内くらい)、庶民が親しみやすい内容が多いとされています。

実際、3幕構成の「売られた花嫁」には、村人たちが酒場でチェコ伝統舞踊であるポルカやフリアントが踊る場面が挿入され、チェコの庶民たちの生き様が分かるような作品となっています。

オペラのあらすじは、若い男女が結婚相手をめぐって、いざこざを起こす、という典型的な筋書きです。

比較的近い時代に作られたものの中で似たような筋書きでピエトロ・マスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」(1890)を思い出します

カヴァレリア・ルスティカーナについて以前紹介しました↓

ヴェリズモ・オペラの時代(1890~1900)

結末が悲劇的な1幕のオペラですが、激しい感情表出が人々の心を動かしたこと、美しい間奏曲が人々の心に響いたこと、などから永遠の名作として名を馳せています。

序曲を聴いてみる!

結婚という一生かかっているイベントがテーマなので、シリアスな場面も散見される割には、ひたすら明るい雰囲気の序曲が作られました。

オペラの「序曲」は、歌劇全体の雰囲気に則り演奏される曲として存在していました。こちらの曲も例外ではないはずですが、先ほども書いたように、ちょっとオーバーに明るい感じがあります。

スメタナは、チェコの農民たちの楽観的な民族性を押し出そうとしていたのかもしれません。

今まで特に触れませんでしたが、このオペラは、リヒャルト・ワーグナーの時代とも被っています。ワーグナーの頃から「序曲」に代わって「前奏曲」が演奏されるようになったことについて、以前に紹介しています↓

ワーグナー「ニュールンベルクのマイスタージンガー」

 

つるの感想

ストーリーは、紆余曲折あるもののハーッピーエンド・序曲も明るい雰囲気であふれている、個人的には文句なしの大満足のオペラです。

スメタナがチェコの農民を題材にしたオペラを世に送り出したことで、スメタナ自身を含めてドヴォルザーク、ヤナーチェク※、、バルトークなどチェコの作曲家たちが作曲しやすい環境を作ることに成功したのですね。

恐らく、本人もそういう意図があったのだろうと思いますが、改めてスメタナの「売られた花嫁」はチェコ国民楽派の礎を築いた作品と言っても過言ではないと思いました!

チェコのモラヴィア地方出身の音楽家。モラヴィアの民族音楽の採集を行った。代表作はモラヴィアを舞台にしたオペラ「イエヌーファ」

アントニン・ドヴォルザークについて

ドヴォルザーク「スラブ舞曲集」第1集(Op.46)第4曲

ドヴォルザーク「スラブ舞曲」第2集(Op.72)第2曲

 

バルトーク・べーラについて↓

バルトーク「ルーマニア民族舞曲」