ワーグナー「ニュールンベルクのマイスタージンガー」

このワーグナー作品は、彼が22歳のときに初めてニュールンベルクを訪れた際に思いつき、それ以降しばらくは、他の作品で忙しく、晩年になりやっと取り組むことが出来た作品です。前奏曲※はとても有名です。

※ワーグナーは、序曲(オーバーチュア)を廃し、前奏曲(プレリュード)として発展させたことで知られる。序曲と前奏曲は共に歌劇開始時に演奏される器楽曲のことだが、序曲が歌劇のストーリ全体に対応する曲だとすると、前奏曲は歌劇開始時の雰囲気に対応する曲のことである。

初演は、バイエルン州ミュンヘンにある歌劇場※で行われました。

※本記事の末尾のリンク参照

ちなみにマイスタージンガーは、かつて歌と詩の能力が高い者に与えられる称号のことで、実際に存在した制度です。

<参考地図>

オペラの概要

舞台は15世紀~16世紀頃のニュールンベルク

ニュールンベルクは、階級制度をベースに、貿易の要所として栄えていました。

登場人物たちは、手工業組合に属する職人たちで、階級制度の最下位にあたる人々です

そして面白いのが、この手工業組合にマイスタージンガーの制度があることです
組合本来の目的※とは関係ない歌と詩の技術の高さを示す称号です。

※組合の目的はより身分の高い商人たちに対抗すること

組合というだけあって、普段は多数決で物事が決められるという平和さ

しかし、地方出身の騎士が組合員になりたいと言ってきたときには、
さすがに混乱。それでも、口喧嘩と殴り合いなので、やはり平和だと思います!

さて、組合員たちのことを中心に書いてきましたが、実際は、この地方出身の騎士が主人公です。

彼が、マイスター称号を得るうえで絶対条件となる組合員資格を得ようとした理由は、愛する女性と結婚するためです。

実は、彼は手工業組合の一員の娘と恋をしたのです。
この娘の父は、マイスタージンガー制度をニュールンベルクの誇りと考えており、娘の結婚相手にはマイスター称号を持つ者と決めてしまったのです。

歌や詩の知識がゼロだった騎士を救うことになるのが、ハンス・ザックスというマイスターの称号を持つ靴屋の親方。

ハンス・ザックスは実在の人物で、ニュールンベルクにハンス・ザックス広場がある。靴屋の親方になる前には、ミュンヘンの音楽学校で教えていたこともある。

物語の中で、彼は、騎士に歌と詩を教え、マイスター称号獲得をもたらします。

最後のクライマックスシーンである、組合員の娘の結婚相手を決める歌合戦で、騎士は、詩を見事に歌い上げ、愛する人との結婚を手に入れます。

しかし、本当のクライマックスはその場で、ハンス・ザックスが民衆の前でスピーチをする場面。そこで彼は、マイスタージンガー制度という伝統の重要性を熱く語ります。

重要性とは、つまり、身分・階級に関係なく芸術が全ての人が享受するべきものであり、それを体現しているのがマイスタージンガーであること、です!

つるの感想

絵本に出てきそうな平和なオペラで、お気に入りオペラになりました♪

オペラの舞台であるニュールンベルクやハンス・ザックス広場のあるミュンヘンについてはこちらの記事でも紹介しています↓

ドイツ南東部を音楽飛行

中世ヨーロッパ世界に関心を持った方はこちらをご覧ください↓

マイスター・ジンガーが生きたのはどんな時代?