カバーガラスの紫外線透過強度を測定

古い社宅の窓ガラスを透過した自然光の紫外線強度が少し減衰していたことから、ガラスの紫外線吸収の効果について検証したいと思います。

今回はきれいなカバーガラスの紫外線透過強度を測定することで、それを確かめてみます。

 

以下の初回の紫外線強度測定の記事で、古い社宅の窓ガラスを透過した自然光の紫外線強度が減衰することを確認しています。

紫外線測定記録1(2019年3月9日@社宅)

 

紫外線透過強度を測定

今回準備したカバーガラスは、大学時代に大変お世話になりました、松浪硝子工業さんの角カバーガラスです。

※松浪硝子工業さんのカバーガラス紹介サイトはこちら
http://www.matsunami-glass.co.jp/product/glass/square_microscope_cover_glass/

 

身近なところでカバーガラスが売っていなかったので、銀座の東急ハンズで何とかGETしたのですが、

「メーカー希望価格10個で3000円」の商品が1個で500円+税で売られていたのは衝撃的でした(笑)

 

人生、質の高いものをいかに安く手に入れるかが大切だと改めて思い知らされました。

 

話がそれましたが、紫外線強度計を利用して早速、(高級)カバーガラスの紫外線強度を測定してみました。

 

<測定日時:2020年2月11日15時 晴れ>

まずはカバーガラスなしの紫外線強度を測定。

太陽の位置が低いため傾けて測定しました。

1,689μW/cm²

 

次にカバーガラスで検出部分を覆って測定しました。

1,500μW/cm²

 

なるほど、確かに紫外線透過強度がやや減衰していますね。
透過率はおよそ88%です。

 

 

比較検討のために、傾けた状態で測定した結果も載せたいと思います。

 

<測定日時:2020年2月11日15時 晴れ>

強度計を床に水平に置いた場合は、冬なので太陽光の入射角が45°ぐらいになった状態での測定になると思われます。

392μW/cm²

 

次にカバーガラスで検出部分を覆って測定しました。

337μW/cm²

 

 

こちらも同様に減衰が見られますね。透過率はおよそ85%です。

 

きれいなガラスを使って測定を行いましたので、ガラスを通過することで紫外線強度が確かに低下することが確認できました。

 

考察

今回の測定結果に関して、以下の4点に注目して考察を行ってみました。

1.単層ガラスの紫外線反射率について
2.反射率と入射角の関係について
3.ガラスの厚みと紫外線吸収について
4.硼珪酸ガラスとソーダ石灰ガラスの紫外線吸収について

 

 

1.単層ガラスの紫外線反射率について

以下の過去の記事でも紹介しましたが、島津製作所さんのサイトに反射率の分かりやすい説明がありますので詳細説明は省かせていただきます。

※島津製作所さんのサイトはこちら
https://www.shimadzu.co.jp/products/opt/guide4/02.html

※過去の記事はこちら↓↓

ガラスの紫外線吸収について

 

 

ガラスの屈折率nは可視光域でも紫外線域でもあまり変化はなくn≒1.5なので、反射率R≒4%程の見込みです。

また、ガラスの中の紫外線がガラスの外に出ていくときも反射が起こりますので、透過した96%の紫外線がさらに4%反射して、92.16%がガラスの板を透過してくる計算になりますね。

反射した光がガラスの中でまた反射して戻ってくる多重反射分を無視するならば、

カバーガラスを重ねる枚数pを増やすごとに、透過率が0.96の2p乗に比例して小さくなることになります。

 

確かにスライドガラスを50枚程重ねてみると、ミラーのようになって向こうがみにくくなりました(上記の近似計算では透過率1.7%)。

 

☞紫外線吸収より反射による減衰の寄与が大きいと言えそうです!

 

 

2.反射率と入射角の関係について

反射率を計算するためのフレネルの式は、光の入射角度や光の波の振動方向によって計算結果が違ってきます。

※細かいことは「フレネルの式」でWikipediaで検索すると確認できますので、ここでは説明を省きます。

 

太陽光の振動方向は均一とし、今回強度計を水平に置いた場合の入射角を45°とすると、反射率はおよそ5%となりました(計算中もわりと近似しました)。

 

今回の測定結果における入射角の違いによる反射率の違いの比較は、紫外線強度の桁が違うため比較としてはいまいちですが、

垂直入射時より透過率が小さくなる点は計算結果と合致しています!

 

☞紫外線の入射角が大きくなると、反射率が大きくなると言えそうです!

 

 

3.ガラスの厚みと紫外線吸収について

上記の島津製作所さんのサイトでは、光の波長の1/4の厚みの薄膜をコーティングし屈折率を調整することで、反射率が調整できることが紹介されています。

百ナノ~数マイクロレベルの膜厚範囲で、反射率(透過率)が影響を受けることは考えられますが、百マイクロのカバーガラス~数ミリの窓ガラスの厚みではほとんど影響はないと思われます。

 

ガラスの厚みが影響しそうな点としては、

「紫外線のガラス透過時における吸収」の程度が変化する可能性があることが挙げられます。

 

残念なことに、今の手持ちのツールでは【厚み】に関する検証ができそうにないので、あまり考えないことにします(笑)

 

 

4.硼珪酸ガラスとソーダ石灰ガラスの紫外線吸収について

今回のカバーガラスの紫外線透過強度測定は、紫外線吸収の検証が主な目的です。

ここまでの測定・計算結果からは、反射により想定される強度の低下よりも少し大きな低下がみられていますので、

少なからず紫外線がガラスの中で減衰していることが言えそうです。

 

一方で、カバーガラスを買って測定も行って、当記事を書いているときに気が付いたのですが、

カバーガラスの材質は硼珪(ホウケイ)酸ガラスであり、窓ガラスのソーダ石灰ガラスとは異なります(笑)

 

2種類のガラスの特性の違いは、日電理化硝子さんのサイトに記載がありましたので、ここでは詳細説明は省きます。

※日電理化硝子さんのサイトはこちら
https://www.nichiden-rika.com/data/qa

 

2種類のガラスの違いで紫外線吸収に影響がありそうなポイントとしては、

B²O³、Al²O³、Na²O、CaOといった金属酸化物の含有比率が挙げられます。

 

これらの金属酸化物がガラスの紫外線吸収特性に与える影響は、過去の記事でも引用しました論文資料の内容が参考になります!

※角野広平さん「ガラスの光学的性質 Ⅰ」PDFよりイラストを引用
https://www.newglass.jp/mag/TITL/maghtml/92-pdf/+92-p059.pdf

 

図を見ると(分かる人には)分かるように、

ガラスの構成成分であるSiO²は200nm~250nmより高エネルギー(短波長)の領域で紫外線の吸収が発生するバンド構造となっているようです。

 

地表に降り注いでいる紫外線である、UV-B(波長280~315nm)とUV-A(波長315~400nm)は、SiO²だけでは吸収できそうにありませんね!

 

また、

今回購入した硼珪酸ガラスに多く含まれるB²O³も紫外線カットの効果は期待できないように思います(笑)

 

ただし論文によれば、ソーダ石灰ガラスの方に多めに含まれているNa²O、CaOといったアルカリ金属の成分には、伝導体と価電子帯のバンドギャップを狭める効果があるようです。

SiO²ガラスは添加物によって、紫外線カット効果が発現していることが推測されます!

 

カバーガラスは、化学・光学実験を行う目的で硼珪酸ガラスが用いられているため、紫外線吸収も小さいほうが望ましいというわけですね。

日焼け止めなどの効果を検証するためにカバーガラスを購入しましたので、かめにとっても好都合です♪

反射以外の理由による紫外線透過強度の低下も測定によって確認されましたので、その点は今後の考察でも考慮したいと思います。

 

☞硼珪酸ガラスとソーダ石灰ガラスでは、恐らく、後者の方が紫外線吸収効果は高いと思われます!

 

感想

一般に売られている窓ガラスはそこまで紫外線吸収効果は期待できないかもしれませんが、

窓ガラスを何枚も重ねたり、ガラスに添加物を加えたりすることで紫外線透過率を減らすことができそうです!

 

将来建築予定のつるかめハウスの窓は、

・複層ガラスの複数枚組み合わせて断熱効果も高めてみたりとか

・ビール瓶の色をした遮光ガラスで作りはシンプルにしたりとか

いろいろアイデアが出せそうですね♪

 

転居先の借り上げ社宅の2重窓ガラスでも、すでに大きな紫外線カットが確認できていますので、定年退職後の未来のガラスラインナップに期待したいと思います!

※借り上げ社宅の2重窓ガラスの紫外線透過強度測定結果は、こちらの記事で紹介しています。

レースカーテンによる紫外線対策について

 

 

今回の結果は、

東急ハンズで500円+税を払ったかいがありましたよ(笑)