窓ガラス自体も紫外線を減衰させる効果があるようですので、その調査結果をまとめたいと思います。
過去の記事の中で社宅の窓ガラス越しに紫外線を測定した際に、いくらか紫外線が減衰することが確認できましたため、その理由を確認することにしました。
※当時は窓ガラスの汚れによる減衰と考えていました。
ガラスの紫外線吸収
物質に電磁波(光や赤外線・紫外線など)が当たりますと、反射・散乱・吸収により透過していく強度が減衰します。
このとき反射・散乱・吸収が起こる程度は、物質の材質や形状・表面コーティングなどに加えて、電磁波の波長によって決まります。
一般家庭の窓で使用されていると思われるガラスにおいては、次の特徴が挙げられます。
- ソーダ(石灰)ガラス
→ケイ素Siと酸素Oの原子で作られた正四面体構造の骨格にナトリウムイオンNa+とカルシウムイオンCa2+が入り込んだ構造をしています。 - 可視光領域(波長:約380~780nm)での屈折率nがn≒1.5のため、反射率RはR≒4%となり吸収を考慮してもほとんど透過します。
※参考文献:㈱島津製作所ホームページ「単層膜の反射率」 - くもりガラスは表面に凸凹を作ることで、電磁波を散乱させています。
周辺の状況にもよりますが、つるつるのガラスよりは直射日光の強度が分散されそうです。
※影に回り込む電磁波は、逆に強くなるかも知れません。効果は波長によって異なります。 - 可視光領域での吸収はわずかですが、紫外線領域ではある波長域から急激に吸収量が大きくなります。
※引用:角野広平「ガラスの光学的性質 Ⅰ」PDFおよび「ガラスの光学的性質 Ⅱ」PDFより
少し読み取りにくいですがUV-Bの波長域である315nm当たりから透過率が下がっていることから、
一般家庭のガラスはUV-Bを少しだけ減衰させるのに効果がありそうです。
日光の紫外線強度の中で占める割合が多いUV-Aは、ほとんど減衰効果が見込めないことから、これまでの社宅での紫外線測定結果は、①反射と②汚れによる散乱の2つの影響を主に受けていると考えられます。
②の汚れの影響を検証するために、次回は実験で使うようなきれいなガラスを用意してみたいと思います!
※こちらの記事で、カバーガラスの透過強度測定を行っています。
紫外線吸収と紫外線散乱
今回調査したガラスの紫外線領域での大きな減衰効果は、紫外線の「吸収」によるものです。
ガラスの中にある電子が紫外線のエネルギーを利用して、原子核からの拘束から逃れて自由に動ける状態になるのです!
この自由になった電子が物質の中を移動したり、別のルートを通って元の拘束された状態に戻ることで、吸収したエネルギーは熱となり物質が温められます。
LEDや蛍光灯といった照明は、この自由になった電子が元の状態に戻る際に電磁波(可視光)としてエネルギーを放出しますが、一連の過程で熱に変換されるエネルギーも多いため発光部分は熱くなります。
今回の調査でガラスに吸収された紫外線が電磁波になるのか熱になるのか、あるいは別のものになるのかはネット上の情報からは読み取れませんでした。
原理は少し違いますが、日焼け止めや化粧品にUVカットの目的で添加されている有機系紫外線吸収剤も、吸収した紫外線のエネルギーがどうなるかは研究段階であるように思えました。
※参考文献:菊池研究室ホームページ「紫外線吸収剤(サンスクリーン剤)の励起状態」
吸収によるUVカットに課題が残る一方で、紫外線の「散乱」による減衰効果を利用している無機系紫外線散乱剤は、肌への影響が小さいと世間では認識されているように思えました。
こちらは酸化チタンや酸化亜鉛といった金属酸化物を数十~数百nmの粒にしたことで発現する、分極の共鳴現象を活用していると、かめは考えています。
紫外線などの電磁波が伝播している電界を、打ち消す方向にナノ粒子が分極しますが、サイズや形によって共鳴する波長を調整することができます。
ナノ粒子の形が統一されていないと可視光領域の光も散乱する可能性がありますので、化粧品等の使用時の透明感はメーカーの加工技術によると思われます。(成分表示からは形までは分かりませんが…)
このナノ粒子を肌に塗りつけて層を形成すれば、透過する紫外線を効果的に減衰させることができると考えられます。
ただし、大学の研究でナノ粒子を取り扱っていたかめの感覚からすると、
ナノレベルの塗りムラや肌表面の凸凹により、局所的に紫外線が増幅されていることが懸念されます。
「吸収」によって紫外線吸収物質に取り込まれた紫外線は、熱、あるいは紫外線よりエネルギーの小さな(≒波長の長い)電磁波として放出されますが、「散乱」は照射された紫外線と同じエネルギー(≒波長)の紫外線が周囲に分散されます。
ナノ粒子の分布によっては、分散されたはずの紫外線が逆に重なり合って強めあう結果となり、ナノレベルの範囲においては肌へのダメージが大きくなるのではないかとかめは感じました。
幸いにも、人の表皮を構成する4つの層「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の一番表面にある角質層の厚みが20μmであるため、皮膚表面の数百nm限定で皮膚が傷付けられても、角質が剥がれ落ちるだけで問題にならないのかもしれません。
恐らく、状況によっては少なからず皮膚への影響があると考えます。
- 傷や肌荒れによって角質層や顆粒層が破壊された状態で日焼け止めを利用する場合
- メラニン色素を生産するメラノサイトが集中しているほくろなどに塗る場合
皮膚がんは有棘層・基底層の細胞やメラノサイトが傷付けられることで引き起こされる可能性がありますので、無機系紫外線散乱剤も刺激物質としての認識を持って利用されるのがより安全とかめは考えます。
また、調べていて知ったのですが、顆粒層を構成している細胞はケラトヒアリン顆粒という粒子が含まれているため、紫外線を跳ね返す効果があるそうです。
ケラトヒアリン顆粒は、大小さまざまな形をしており電子密度も高いことから、同様に散乱により内部に侵入する紫外線を減衰させていることが考えられます。
こちらも皮膚のコンディションが悪いときに紫外線が当たると、防御機能が逆に人体に悪い影響を与えるような気もします。
結論としては、以下の3点となりそうです。
- 肌にダメージがあるときは、紫外線も日焼け止めも避けよう!
- 日焼け止めを塗る前には、肌を守るための化粧水等を利用してバリアを張ろう!
- 紫外線はできれば日傘やフェイスマスクなどで対策しよう!
※記事の内容はかめの想像となりますので、論文資料を読み込んだ場合に違った結論に至ることも考えられます。詳細な調査をする時間がないため、より安全側の結論としてつるさんに説明しています。
ガラスの話からは大きく脱線しましたが、興味がわいたので考察してみました(笑)
つるさんがますます家から出なくなりそうですので、ガラス窓の紫外線対策と合わせて、
ビタミンD不足対策として魚をたくさん食べるように注意します!!
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