【読書記録】顔は口ほどに嘘をつく(原著:Emotions Revealed))

ドラマLie to Meの元ネタである、表情分析に関する、「顔は口ほどに嘘をつく」(日本語訳版)を読みました。
正直、共感することもあれば、またその逆もありました。(私たちの日常と関係のある事例が少ないのかもしれません。)また、感情に関する言葉は、日本語と英語で意味上のずれがありそうな気がします。

訳書タイトル「顔は口ほどに嘘をつく」はカジュアルですが、研究論文を一般向けに分かりやすく編集した本です。

とはいえ、ドラマを楽しめた人で本書に興味を持った方、そして<脳科学>や<人の感情・心理>に関心がある人に非常にお勧めです!

そして、相手をより良く理解できるようになり、対人関係UPが期待できると思います!

著者について

著者のポール・エクマン教授は、大学教授の他にも、FBIやCIAのアドバイザーを務めるなど、華々しくご活躍されていることは本を読む前から知っていましたが、本を読んで新たに知ったことがあったので記しておきます。

●筆者自身は、一般の人よりも表情を読み取ることが出来るため、研究以上で分かる以上の情報を得ることが出来る。

●1950年代終わりに表情分析を始める以前、うつ病患者の特徴的な手の動きを発見した。

表情分析について

心理学は欲を扱う学問であるのに対して、表情分析は感情を扱う学問。時には、感情と欲が互いに邪魔をし合う。そして、時には感情が欲を上回り、またその逆もも起こる。

●「感情はわたしたちの人生を動機付けるものである」(byシルバン・トルキンス)の言葉に示されるように、人間は、肯定的な感情を増やし、否定的な感情を減らすように人生を組み立てる、という側面がある。

●表情とは「無意識」かつ「瞬間」で現れるものであり、危険を察知した時に仲間に一瞬でそれを一瞬で伝える、安全装置の一種である。これは、危険を察知した際に、(逃げる準備のために)足に血がどっと流れるような生理機能の変化と同様である。

 

感情について

●感情は、人間の進化の過程で培われたもので、人間が普遍的かつ生得的に持つ能力である。(ダーウィンもこのように主張したが、この主張は誤りとされてきた。)

●感情には、(1)人間が長い進化の過程で身に付いたもの、(2)過去の体験(若年であればあるほど影響は強大化する)に後天的に身に付いたもの、に分けられる。(1)の例として、人間が蛇やクモ・車の衝突の場面で無意識で瞬間的に感じる「恐怖」がある。そして、(2)の例は、幼少期において年上の兄弟たちに抑圧されたことで、その後の人生でも年上の人から支配されている、と普通の人と比べ「怒り」を感じやすくなる場合が挙げられる。さらに、(1)は強力で変えることが難しいが、(2)はより柔軟であり、変化させることが出来るとされる。

●気分は感情とは区別される。第一に、気分は通常、感情よりも長時間持続する(数時間~数日)のに対し、感情は短時間しか持続しない。(一瞬~数時間)、第二に、気分は、その気分を生じさせている原因が何であるか本人も説明できないことが多いのに対して、感情はその逆で原因が明らかである。(筆者は、感情が人生を豊かにするうえで大切であると考える一方、気分はその逆で人生の選択を狭め思考を歪めるため、無くせれば無くしたいと考えている。)

●感情は、適度に表れないと、人に大きな弊害をもたらす。例えば、うつ病はある特定の出来事に対する「悲しみ」「苦悩」の過剰反応であると考えられ、日常生活に支障をきたす。

●感情は隠すことが出来るが、果たしてそれが良いことか、ということについては皆が各々じっくり考える必要がある。例えば、うつ病患者が薬を摂取して表に感情を表さなくなった場合、彼または彼女は周囲の人の慰めを得られなくなる可能性が高く、結果的に悲しみが長引くかもしれない。(このように、悲しんでいる人を助けたいという人の感情は長い進化の過程で人間が身に付けたものである。)

個人的な感想

つる個人としては、社会学に関心があるので、その観点で考えたことについて書きたいと思います。(本書で深く取り上げられている問題ではなく、個人的な関心に沿って書きます。)

「感情とは」の最初に書いた通り、著者は、人間が普遍的かつ生得的に持つ能力である、というダーウィンの主張を信じていますが、学者の間で批判が多く、それらと折り合いをつけるために、著者が研究で使ったのが「表示ルール」という概念だそうです。

表示ルールとは、人前に限って、特定の感情を露にするべきでないこと社会上のルールとしてに親・年長者などから教え込まれていること。

簡単に言うと、一人の時に見せる表情と、他人の前で見せる表情が一致しない場合は、表示ルールに従っているということです。

かつての実験では、この認識が少なく、研究者は単純に場面と人の表情を観察してきましたが、実際には、これらの表情が、表示ルールにより捻じ曲げられた偽りの表情である可能性があります。

ちなみに、アメリカ人の方が日本人よりも、表示ルールが強く働いているという実験結果があるようです。(正しいか正しくないかの議論はさておき)

ドラマでも、博士が黒人に対する白人たちの隠れた偏見を暴く場面があるのですが、実際には偏見自体はあまり問題ではありませんでした。それは、白人たちが表示ルールに従って動いているためです。

表示ルールの学習の根底は家庭を中心とする教育にあると思います。異人種に対する偏見に関しても、誰かが問題に気が付いて、声を上げることで社旗的な通念が成立します。

表示ルールは社会生活において非常に大切ですが、大人がそれらを敢えて全部子どもに教えようとしたら、量が膨大過ぎて大変ですし、そしてその教えからどれだけ学ぶかも子どもの性格や成長過程によるとしたら、そういう意味でやはり大変です。

そもそも、感情は人間が進化の過程で身に付けた生得的な能力だとすれば、個人にとっても社会にとっても、感情を表にすることで得られるメリットは想像以上に大きいのかもしれません。(←著者の意見に影響されています)

つるは、話し相手が気楽に素直な表情を出せるようになりたいと思います♪